2013年7月22日月曜日

NPOボランティアはキャズムを超える

これまで「無償労働」といえば、町内会のイベントを手伝ったり、
PTAやお祭り行事などの運営を行う、いわゆる地域貢献活動が多かったのでは
ないでしょうか。

しかし、町内会の手伝いを「ボランティア活動」という人はあまり
いなかったと思います。

私は田舎の生まれなので、小さい頃から町内会の手伝いをしていましたが、
大人にとってのそれは、近隣の方々とうまくやっていきながら
地域で生活していくための、義務的な無償労働だったような気がします。

そういう「無償労働」とは違い、NPO団体などに所属しながら、仕事のスキル
つまり金銭的付加価値を有する労働を無償で提供して、
社会に貢献する無償労働≒ボランティアがここ最近、浸透していっています。

このNPOボランティアやプロボノという活動が、私の中ではキャズムを
超えつつあり、より一般化していっているのではないか、と思っています。

キャズムというのは情報通信業界の、特に新技術を語る文脈で
よく利用される言葉です。情報システム用語辞典ではこう書いてあります。
ハイテク業界において新製品・新技術を市場に浸透させていく
際に見られる、初期市場からメインストリーム市場への移行を
阻害する深い溝のこと - 情報システム用語辞典
このキャズム(深い溝)というものを図で表すとこうなります。


この「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間を「キャズム」
といいます。

ノートパソコンを例にとります。

ノートパソコンが出たばかりの時は、高価な上に仕事で使う場面がないため
一般的にはあまり見向きされませんでした。

しかしPCオタク(イノベーター)は、新しいものが好きだから買うわけです。

それからしばらくすると、もしかしてこれは使えるんじゃないか?もしくは
頑張って使うことで色々いいことがあるんじゃないか?
とりあえず、使ってみようという人たち(アーリーアダプター)が出てきます。

アーリーアダプターたちが成功し、その成功体験を世間に提供します。
ノートパソコンは持ち歩きができ、営業担当者はお客様との打ち合わせで
すぐに見積りが出せて、商談受注につながったという情報が世間に浸透します。

そうするとその恩恵を受けたい実利者(アーリーマジョリティ)がノート
パソコンを買いはじめます。この時点で雑誌やニュースで言葉を当たり前に見る
ようになりノートパソコンなしでは仕事にならないというようになります。

その後、機械にあまり明るくない人たち(レイトマジョリティ)も会社が
使わせるからExcelとかWordを使いはじめます。
ここまでくると、生活必需品です。

ここまできたら、市場が飽和してきてパソコンメーカーは
再度、顧客の購買意欲を引き出すために、新しい製品市場を作ります。

具体的にはタブレット端末やスマートフォンを開発し、
イノベーターが興味を持つようになる、というサイクルのことです。


さて、ここからが私が言いたいことです。

NPO法人a-conとNPO法人二枚目の名刺が「社会人ボランティア意識調査」
という調査を公開しているのですが、ボランティア活動の市民の関与度構造に
ついてこういう結果が出ています。


さっきのキャズムの図と左右が逆になるので、わかりづらいのですが
ボランティア活動層が15.2%を超えようとしています。

つまり、「ボランティア興味あり非活動層」(アーリーマジョリティー)が
「ボランティア活動層」となることでキャズムを超え、一般化していくのです。

ボランティアをしたいと思っているけど、まだやっていない人たちが
どういう行動をとるかによって、ノートパソコンのようにボランティア活動が
当たり前になっていき、社会問題が解決するスピードが上がるかどうかが
決まるのです。


キャズムを超えるためには、大きなインパクトが必要です。
それが、2011年3月11日の東日本大震災での被災地ボランティアだったのでは
ないかと私は考えています。(上の調査結果は震災後のもの)

成果のあるなしにかかわらず、普段ボランティアをしたことがなかった人たちが
被災地にボランティアに行ったというのは、意義深いのです。


もちろんハイテク製品が作り上げる市場が変化するスピードと、社会構造が
変化するスピードは同一速度ではありませんので、急に巷にボランティアが
溢れかえるというわけではありません。

NPOボランティア市場の現状を表現する
一つのメタファーとして、ご理解いただければ幸いです。


核家族化により、PTAや町内会に意味を見いだせず、参加しない若者夫婦が
沢山いるということを聞きます。もしかしたら、そういった形の地域貢献活動や
社会貢献活動は、ラガードのフェーズに位置しているのかもしれません。

これからは、NPOでプロボノ活動を行うことで、より組織的に活動し
社会に貢献していくかたちが主流になっていくのかもしれません。


引用元:
情報システム用語辞典:キャズム
社会人意識調査結果(PDF) -  NPO法人a-conとNPO法人二枚目の名刺
本内容は個人の見解であり、所属する企業を代表するものではありません。

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